つるはしを振るっている連中

「誰れか俺れのやつを間違って着とるんじゃないんか。」ますますいらいらした。負け惜みを云う。「どこにぬいだったんだい? ぼんやりすな。」「どこちゅうことがあるかい。ここだい。」「ボヤッとしとるからだ。今に生命までがかッぱらわれてしまうぞ。戦地にゃ物に代りはねえんだぞ。」 つるはしを振るっている連中は、腰が痛くてたまらない。土は深くなれば深くなる程、掘るのは困難だった。中尉や、中隊長や、特曹が作業を見ッぱっている。麻袋につめる連中があとから追ッかける。「どうしたんですか。何か紛失《なく》したんですか?」支配人が、騒ぎの方へ、ちょかちょかと馳せてきた。「上衣が見ッからねえんですよ。多分、誰かゞ間違って着たんだ。俺の名前が書いてあるのに。」強《しい》て作ったような、意気地のない笑いを浮べた。中隊長は聞いて、聞かぬらしく苦々していた。「チャンコロめ、かっぱらって行きやがったんじゃないんですかな。」と内川は云った。「さっき、このあたりで、ウロウロしていたじゃありませんか?」 なるほどと、はッとした。「ぼんやりすなよ。チャンコロに、来る早々から、軍衣をかッぱらわれたりして……そのざまはなんだ!」「なか/\あいつらは、油断がならんですからな。」支配人は云ってきかすように愉快げに笑った。 彼等は、到着した第一日から、支那人を殴る味を覚えてしまった。

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