巨大な防禦設備

 それを、聞きのがさなかった高取は、苦笑を繰りかえしていた。(見えすいている!) 一時間十五分の後、命令された通りの巨大な防禦設備が出来上った。これなら、鬼でも来ろだ。 兵士たちは、くた/\になって宿舎へかえった。ドロまみれの手も、鼻も、頸も洗えなかった。水がなかった。昼食喇叭が鳴り渡る。向うの...

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西南角の土塁の彼方

 西南角の土塁の彼方には、遙かに、草原と、黄土の上の青畑と、団栗《どんぐり》や、楢や、アカシヤの点々たる林が展開していた。霞んで見える。いつも、ほっついている山羊の群れもなかった。――百姓が略奪を用心してかくしたんだろう。階級が一ツちがっていても、いいだくだく[#「いいだくだく」に傍点]と、命令を聞...

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旅団司令部

 旅団司令部と、大隊本部の間は、急設電話によって連絡された。大隊本部と、歩哨線も、緊密に連絡された。兵士は、命令一下、直ちに武器を携えて、戦闘に応じ得る状態の下に置かれた。 辻々では歩哨が、装テンした銃を持って往き来する支那人を一人一人厳重に誰何《すいか》した。 僅か、一昼夜半の間に、市街は、す...

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